遙乃の部屋

第1207回 「やっぱり辛いものですね」

2018/04/03


 「さて、晩飯できたけど・・・食える?」
 「すみません・・・いまはちょっと」
 「そうか。じゃあまた一口大のおにぎりにしておくな」
 「お願いします」
 「おう」
 「・・・すみません、ご飯、作ってあげたいんですが」
 「あのな、さっきから謝り過ぎ」
 「ですが」
 「遙乃が抱えてるのは、遙乃一人だけじゃない。ここにもう一人居るんだ。その苦しみや辛さを俺が分担できるならいくらでも受け入れてやる。でも、実際にはそれはできない。もどかしい限りだけどな。今の遙乃の仕事は、元気な赤ん坊を産むことだ。その分、他の仕事は俺がやる。てか、やらせてくれよ。実際その立場になってみて俺も分かったが、妊娠して子供ができるってのは、男親にとってなかなか実感が沸かないことなんだ。俺自身には何の変化も無いしな。だからこそ、苦しんでる遙乃を支えることが、俺にとっての実感になる」
 「そう・・・ですね。これからもうしばらく迷惑かけてしまいますけど、お願いします」
 「任しとけって。それに、これくらいでへばってられないぞ。生まれたら生まれたで、夜泣きだおむつだなんだともっと大変になるしな」
 「ふふっ、確かに」
 「でもさ、それも含めて俺にとっては喜びなんだよ。子供ができたことで、俺達は夫婦から家族になる。俺が求めていたものがついにこの手に届くところまで来たんだ。こんなにうれしいことは無い」
 「夫婦から家族に・・・」
 「さて、ちょっと話すぎちゃったかな。大丈夫かい?」
 「あ、はい。大丈夫ですよ」
 「そか。食べられそうにないなら、とりあえず水でも入れておきな。この時期乾燥するしな」
 「はい」


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